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燃え盛る大地。聴こえてくるのは炎の音と、微かに聞こえる悲鳴だ。
聞き覚えのあるその悲鳴は、同時に誰かの名前を叫ぶようにも聞こえる。
そして、俺の目の前には背中を向けた同年代ぐらいの人影…
「また…か…」
今年で高校生となった俺は、頻繁にという言葉が当てはまるほどに、この夢をよく見る。
舞台は必ず炎で包まれた、町のような場所。そして、少女の名前を呼んでいるような悲鳴が聞こえる中、俺は炎の中心で、だれかの背中を見つめている。
そして、必ずそこで夢は終わるのだ。
見始めたのはいつ頃だっただろうか。
「ほんと、意味わかんないな」
暗い部屋の中、とりあえず体を起こした俺の視界に、ぼんやりと光る何かが見えた。
それは、8時15分を示すデジタル時計だった。
8時15分…8時15分……
「8時15分!!?」
俺はベッドから飛び起き、部屋を飛び出る。
この俺、彩姿 華徒(あやし かず)は16歳。さらに言うなら、つい二週間ほど前に中学校を卒業したばかりである。
そして、この焦り様から察してもらえばわかると思うが。
「入学式に遅刻はまずい!!」
ということだ。
けして大袈裟ではない大きな音を立てて、一回リビングへと飛び込むように階段を降りる。
リビングの机の上には何もないが、代わりに台所には、皿の上に乗ったトーストと牛乳が置かれていた。
トーストを急いで平らげ、牛乳で流し込む。
洗面所に向かおうと走り出した途端に、流し込んだ何かが戻ってきそうだったが、かろうじてこらえる。
洗面所に入ると、そこには髪を結ぶ少女の姿があった。
「あ、起きたんだね」
髪を結び終え、完璧に準備のできた少女はそう言った。
「起きたんだね、じゃねえよ。これ遅刻ギリギリじゃねえか!」
「それは、ちゃんと起きれなかった華徒が悪いんでしょ?私はもう家出るから全然間に合うもん」
そう言って玄関へと歩いてゆく。
俺は顔を洗い、歯を磨き始める。
彼女の名は、菜魅 結愛(なみ ゆうあ)といって、訳あって現在俺の家に居候している。
俺の親は、仕事の関係上滅多に帰ってくることはなく、家の家事関係は結愛がやってくれている。
一応言っておくが、男女関係とかはないので。
というか、もともと俺と結愛は幼馴染で遊ぶことは多かった。
ただ、互いの親は俺たちが会ってることは知らないが。
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