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階段を一気に駆け上がり、残り一分を切ったあたりで教室の前にたどり着く。
すると、後ろから声をかけられる。
「なんだ、うちのクラスのやつか?」
振り返るとそこには太った顔のパッとしない大人がいた。
おそらく俺たちのクラスの先生だろう。
「あ、はい。B組です」
「初日から遅刻ギリギリとはな…先が思いやられるよ全く」
ちなみに、俺は偉そうな大人が嫌いだ。例えば目の前にいるような。
その事を知っている結愛は、睨みをきかせた俺を先生が見る前に、先生と俺の間に割り込む。
「ああぁ、すみません。以後気を付けますんで」
少々焦り気味に結愛がそう言うと、「もう時間だ、部屋に入れ」と言って教室に入っていく。
「悪いな、結愛…」
「華徒の性格はよく知ってるから…まったく、もう少し成長してよね」
愚痴をこぼして教室に入る結愛。
彼女はこうは言うが、こんな感じで何回か助けられている。
気の利くやつだし、正直感謝している。
部屋に入ると、俺と結愛以外は着席していて、出席番号順に席に座っていることもそれとなく雰囲気で理解する。
まぁ、席の空きが二つしかないからどっちがどっちに座るかなんて一目瞭然なわけだが。
俺は相変わらずの右一番前。「あ」で苗字の始まる者の宿命の席だ。
結愛は軽く横を向いただけでは視界には入らないからおそらく割と後ろの方にいるのだろう。
ただ、そんな席確認の中、ひたすらこちらを見てニタニタと笑っている少年の顔が視界に入る。
何なんだよ全く…
「…というわけで、基本的には入学式の後にいろいろするので、これから体育館に移動してもらう」
その先生の言葉と同時に、生徒たちは立ち上がり、ぞろぞろと廊下へと流れ出てゆく。
「ちょっとちょっと華徒、いきなり遅刻かい?」
その話し方だけで少し腹が立つ。
後ろを振り向くと、やはり先ほどの少年がいた。
「なんだよ、誠。めずらしく遅刻しなかったんだな」
「いやいや、初日から遅刻はまずいでしょ。それぐらいの常識は僕にもあるよ」
「遅刻がまずいという常識はないのか?」
「まあ、そうかもね。でも僕、そんな言うほど遅刻してないよ?」
何をどういってもにたにたと笑っている。
しかし、にたにたと笑っていた顔が突如俺の視界から消し飛んだ。
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