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八重子の祖父と祖母は、親兄弟全てを土砂崩れで失った天涯孤独な者同士だった。
出先で災難を聞き現場に駆けつけた祖母は、半狂乱になりながら素手で土砂を掻き分けた。
その時。
僅かな物音に気づき、村の人と協力して埋まっていた祖父を助けたのだった。
隣の者同士、悲しみに耐えながらいたわり合いながら生活するようになった。
そして八重子の母ナツが生まれた。
失った家族の生まれ変わりだと二人は信じ、おしみのない愛を与え続けた。
でも幸せは永く続かなかった。
土砂崩れの時に受けた後遺症のために、可愛い盛りの娘を残して祖父は他界してしまったのだった。
祖母は災害で亡くなった家族と夫のために、親子で秩父巡礼に出発したのだった。
お遍路の旅は、看病と仕事に疲れた母にとって過酷なものでしかなかった。
出発点になるはずの札所一番にたどり着く前に、三沢で倒れてしまったのだった。
ナツは近くの農家に助けを求めた。
でもあいにく家族は一人もいなかった。
ナツが母親の元へ戻った時、野良仕事を終えたらしい少年が母親の傍らに立っていた。
後のナツの夫との運命的な出会いだった。
その農家で暫く過ごした後、母親は無理を承知で再び巡礼へと旅立って行った。
そして四番下までたどり着いた時、浅見家のまえでまた倒れてしまったのだった。
信心深い家族は、すぐに二人を家の中に運び込んだ。
手厚い看護も、可愛い愛娘の必死の祈りも届かず母親は亡くなってしまったのだった。
母親の死後、ナツは浅見家に引き取られ節と姉妹のように育てられのだった。
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