恋愛対象(中嶋 要side)

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今まで3ヶ月、毎日同じ道を通っていても 桜井の姿を見たこともなかったのに、 それからほんの数日後、 帰宅途中に、ばったりと会った。 俺は、後輩たちに連れ回され飲んだ帰りで、 桜井も、同僚と飲んだ帰りだったらしい。 俺もかなり酔っていたし、 桜井も、たぶん、そうとう飲んでいた。 帰る方向も一緒だし、 自然と並んで歩き始めて、 意識することなく隣にいれるし、 飾らずに話もできる。 やっぱり同期っていいよな・・。 「あれから13年か・・」 桜井がポツリとつぶやくように言った。 第一線で働いて、上を目指してきた桜井。 俺は・・、なにしてんだろうな・・。 仕事だって中途半端な上、 守りたかった家庭も守れなかった・・。 今は、家に帰っても、 誰も待ってないし、 誰かがやって来ることもない・・。 強がってはいたけど、 やっぱり、心に吹くすきま風は、 冷たくて、虚しい・・。
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