35歳の誕生日 ①(1)

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資料を受け取ったら、 ここでの用事はもうない。 私は、すぐに踵を返して、 フロアの出口に向かった。 堂本がいなくて、 ホッとしてるはずなのに、 どこか物足りない・・。 会いたいのか、会いたくないのか・・。 そんなことさえもわからないなんて・・。 歩きながら堂本の作った資料に目を通した。 「・・・・・」 やっぱり完璧だ。 欲しかったデータがグラフとともに見やすくまとめられている。 さすがね。 資料から目を離して、 階段を数段下りたとき、 下の階から踊り場に向かって、 歩いてくる足音がして、 一瞬、私の体が止まった。 「あ・・」 トクン。と 胸が一瞬だけ跳ねた。 会ったら、 どう接したらいいかわからない。 何を話していいのかもわからない・・。 そう思っていたけど、 私は、思ったより、落ち着いてる。
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