35歳の誕生日 ①(3)

17/19
前へ
/37ページ
次へ
彼を追いかけて、私も店内に入ると、 彼はすでに、 コートと財布を手に持って、 カウンターの上に、1000円札を一枚置いていた。 「お釣りは、また今度取りに来るわ」 早口で言って、入口に立ったままの私の横をすり抜けていく。 「ちょ・・ちょっと待ってよ」 歩幅を緩めることなく歩いていく彼を追って、私ももう一度外に出た。 「どこ行くの?」 私が声をかけると、ようやく進むスピードを緩めた。 「とりあえず、 話をつけねーといけねーだろ」 「・・莉子に・・ 会いにいくの・・?」 「あぁ・・」 「莉子は・・ 今、実家に帰ってる。 たぶん、妊娠の報告をしに。 月曜日の仕事までには、こっちに戻ってくると思うけど」 私の事を振り返ることもなく、進んでいく彼に 早口で伝えると、彼は、突然足を止めた。 「そーなんだ・・」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

829人が本棚に入れています
本棚に追加