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彼を追いかけて、私も店内に入ると、
彼はすでに、
コートと財布を手に持って、
カウンターの上に、1000円札を一枚置いていた。
「お釣りは、また今度取りに来るわ」
早口で言って、入口に立ったままの私の横をすり抜けていく。
「ちょ・・ちょっと待ってよ」
歩幅を緩めることなく歩いていく彼を追って、私ももう一度外に出た。
「どこ行くの?」
私が声をかけると、ようやく進むスピードを緩めた。
「とりあえず、
話をつけねーといけねーだろ」
「・・莉子に・・
会いにいくの・・?」
「あぁ・・」
「莉子は・・
今、実家に帰ってる。
たぶん、妊娠の報告をしに。
月曜日の仕事までには、こっちに戻ってくると思うけど」
私の事を振り返ることもなく、進んでいく彼に
早口で伝えると、彼は、突然足を止めた。
「そーなんだ・・」
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