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「そうだ。春浦は文集に何を載せるつもりなんだ? やっぱりいつもの音楽論評ってやつか?」
もうすでに鯖の味噌煮を半分ほど平らげている春浦に、文集の話題を振ってみる。
マイペースそうに見えるし、もしかしたら僕と同じでまだ取り掛かっていないかもしれない。
「んくっ……。うん、そうですよー」
口の中にある物を飲み込んだような音を出した後で、春浦は僕の言葉に返事を返してくれた。
部員になって初めて体験してみたのが、音楽論評というものだった。一番簡単そうに思えたから最初に真似をしてみたのだけれど、意外に難しくて苦労した記憶がある。
「音楽論評って難しくないか?」
「本格的にやろうとすると難しいと。でもわたしは感想のような感じで書いてるから、難しいなんて考えたことないかもです」
「そうか。そういうのも論評って言えるんだな」
「さあ、どうですかね?……そんなのわからないですよ。その道のプロなんかじゃないし」
そう言って、春浦は鯖の身を口に放り込んだ。
「よくわからんが、そんなんでいいのか?」
「別に仕事というわけでもないのだし、厳密にやる必要はないわ。あくまで部活動なのだしね」
春浦の代わりに、宮ノ郷が答えた。
「言われてみれば、そうかもな」
深く考える必要はないのかもしれない。本気でやりたいというのなら別だけれど、楽しみたいという感じであれば厳密にやる必要はないのかもしれない。
「君は何をするのです、遠坂くん」
鯖の味噌煮はすでに食べ終わったらしく、焼き鳥の缶詰を開けながら、春浦が訊いてきた。
「それを今考え中でさ。宮ノ郷が随筆を提案してくれたんだが、どうしようか迷ってる」
「なるほどー。でも迷うよりもまずやってみる方がいいと思いますよ」
「まあ、そうなんだけどさ」
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