3人が本棚に入れています
本棚に追加
だけど。
「……本当にそう思ってる?」
あの時の春浦美咲と同じように、僕の瞳を見つめて彼女は言った。
見透かしたように発せられたその言葉は、僕の心をドキリとさせた。
「ほ、本当にって、なんですか」
「そのままの意味だよ。……確証があって言った訳じゃないんだけど、なんとなくそんな気がして」
私と似てる気もしたし、と春浦先輩は小さく付け足した。
「似てる?」
「あ……ううん、なんでもないよ」
「そう、ですか」
僕と春浦先輩が似ている? どう考えても似ていないと思うのだけれど。
「私の勘違いだったらいいんだけど、思っていることは正直に言って欲しいな。そうでないと、遠坂君が納得できるような答えを見つけられない。だからいいんだよ? 納得できないって言っても」
正直に、か。
先輩には悪いけれど、そんな風にはなれない。
「わかりました。でも、さっきの言葉は本当です」
嘘に嘘を重ねる。最低かもしれないけれど、そうやってでしか僕は人付き合いができない。
「ならいいけど」
そう言って、先輩は視線を落とした。そこにはガラスのコップに入ったオレンジジュースがあって、先輩はそれを両手で掴んでいる。オレンジ色の水面を見つめる彼女の顔は、どこか寂しそうに見えた。
でもそれも一瞬のことで、すぐにあの笑顔で僕に目を向けてきた。
もしかしたら僕の気のせいだったのかもしれない。
「それで、これからどうする?」
「え……あ、はい。えっと、この時代にどれだけいるのかわかりませんし、どっかで泊まることを考えた方がいいですよね?」
「遠坂君の家に行くわけにもいかないしね」
「変に思われますしね。あ、でも説明すればなんとか……」
「ダメだよ」
最初のコメントを投稿しよう!