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ダメ?
「どうしてですか」
「タイムパラドックスって知ってる?」
聞いたことがあるような、ないような。
「タイムスリップ先で必要以上に人と関わると、戻った時間軸で何かが変わってしまう。そういう話もあるんだ……あ。どうしよう。もう私と関わってるよ! やばいかな、やばいよね!?」
いきなり取り乱し始めた春浦先輩。僕はわたわたと動じる先輩の姿が可愛くてやばいです。
「ま、まあ。最初はタイムスリップしたなんて知らなかったんですから」
「だけど戻ったとき大変なことになってるかもなんだよ!?」
「でももうどうしようもないですし」
「……そう、だよね」
春浦先輩は落ち込んだように俯いてしまう。
そこまで気にしてくれるのか。
「いや、必要なことだと思えばいいんじゃないですか? 実際、僕には先輩が必要ですし」
彼女がいなければ、どうしたらいいのか答えを出せない。考えることすら、できなかったかもしれない。
「遠坂君……」
「だから、その。自分を責めないでください」
自分を責めなければいけないのは僕の方だ。春浦先輩を巻き込んでしまったのは、紛れも無く僕なのだから。たとえそれが不可抗力であったとしても、だ。
「ありがとう」
「別に、お礼を言われることは何も」
優しい微笑みを向けられた僕は気恥しくなって、先輩から顔を逸らした。
そのまま先輩の方へ顔を向けるのはできなくて、大きな窓から外へ視線を向ける。
そこには赤紫色の空があった。もうじき、日が沈むのだろう。
「でも、だとしたらどこに行けばいいんでしょうかね。あんまりお金持ってないんで、ホテルとかは無理ですし」
野宿するしかないのかもしれない。
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