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チャイムを鳴らしたところで、きっとそれどころではないだろう。
結局、玄関の前で待つことにした。
オレンジ色だった空はすでになく、夜の闇が近づいている。春浦宅を見ると、二階の部屋に明かりが点っていた。
春浦は大丈夫なのだろうか。
そう思った時だった。ドカドカと、走り回るような音が聞こえてきた。
気になって玄関に視線をやると、突然ドアが勢いよく開け放たれる。姿を見せたのは、一人少女をおぶった春浦先輩だった。
「ど、どうしたんですか!?」
慌てて駆け寄ると、焦った表情の先輩と視線が重なる。
「ね、熱が」
振り返るような仕草をする先輩。彼女の背中に視線を向けると、目を瞑り顔を真っ赤にさせた少女がいた。
春浦美咲。小学生の彼女だと察する。
僕の知る彼女とはやはり少し違っていたけれど、その顔は紛れもなく春浦美咲だった。
「ちょっと触るぞ」
意識が曖昧そうな春浦に小声で断りを入れると、そっとその額に手を当てる。思っていた以上に額は熱を帯びていた。
やばい。直感的にそう思った。
「病院に?」
今度は先輩に話しかける。
「う、うん」
「僕が背負いますよ。たぶん、先輩より力あるので」
「でも」
「先輩は荷物持ってください」
半ば無理やり春浦を抱え、背中におぶった。代わりに先輩に荷物を渡す。
「保健証は持ってます?」
「も、持ってるよ」
「じゃあ行きましょう。……ここからだと総合病院が近いか」
僕は先輩の顔を一度だけ確認すると、走り出した。
「ま、待って!」
そう言ってついてくる先輩の気配を感じた。
☆
廊下の壁にもたれかかって、病室の扉を見つめていた。
高熱ではあったけれど、特に重い病気にかかっているわけではない。春浦にくだされた診断を聞いて、とりあえず僕も先輩も安堵した。
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