第二章

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その後、春浦姉妹の母親が駆けつけ、今は三人で病室にいる。 僕は部外者なため、外で待つことにした。 そうして何分かが経っている。 先ほど気が付いたのだけれど、僕のスマホの時計は不自然に止まっていて、ついでに言えばネットにも繋がらない状態だった。だからその場では詳しい時刻を知ることはできない。 この時代に来て、どれくらい経ったのか。それを知ることも、今が何時なのかを知ることもできない。そして三人が病室に入って正確には何分経ったかも。 何の気もなしに天井を見上げる。真っ白な照明の明かりが目に入った。 ちょうどそのタイミングで扉の開く音がした。 視線を前に戻すと、春浦先輩と目が合った。 「ごめんね、遠坂君」 開口一番、先輩はそう言った。 「いえ……。はるう、いや妹さんはどうですか?」 「うん、今はぐっすり眠ってるよ」 「よかったです」 先輩はゆっくりとした動作で、僕の傍まで移動してきた。 「……ありがとう」 そして、静かにそう言った。 「え?」 「いろいろ、助けてくれて」 「いや、お礼なんていいですよ。……妹さんは僕にとっても大切な友達ですから。まあ、この時代のあいつは僕のこと知らないと思いますけど」 「遠坂君は、いい人だね。優しい」 「そんなんじゃないですよ」 しばらく、沈黙が続く。 何を言えばいいのかわからなかったし、おそらく先輩もそうだった。 「……傍にいてあげてください」 やがて、口から出たのはそんなものだった。 「でも、遠坂君が」 「僕のことは気にしないでください。……じゃあ、僕はこれで」 行くあては結局決まらなかったけれど、まあなんとかなるだろう。春浦のこともあったし、あまり頼りたくはないし。 「顔見ていく?」 その場をあとにしようとしたところで、先輩は僕を呼び止めた。 「いや、いいです。あんまり関わらない方がいいんですよね? 僕はいいですけど、先輩や春浦の未来が変わっちゃうのは、なんとなく嫌ですから」 今度こそ、僕は歩き出す。 廊下の窓から見える空には、微かに月明かりの気配がした。
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