第二章

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それとも、過去が変わってしまったのか? 僕が先輩に出会ってしまったせいで? 過去の春浦に会ってしまったせいで? 僕のせいで変わってしまった? ……いや、それはないはずだ。 春浦先輩が言う言葉を信じれば、変わるのは未来だということだった。だとすれば先輩が消えるなんてことはない、はずだ。 「……本当か? いや疑っているわけじゃないんだ。その――」 「いないって言っているじゃない。アンタの勘違いよ」 今まで作業に集中していたはずの宮ノ郷が、僕の言葉を遮った。 「そうよね、春浦さん」 「です。遠坂君の勘違いです」 「いや、でも」 「その人に会ったのはだいぶ前なんでしょ? だったら記憶違いがあっても仕方ないわ」 思わず宮ノ郷を振り返ると、彼女の瞳が僕の瞳と重なる。いつになく真剣なまなざしだった。 もしかすると、僕は触れてはいけないものに触れてしまったのだろうか。そんな不安が頭を過る。 結局、確認なんてできなくて、その日の部活動は終了した。 ☆ 部室の鍵を閉める宮ノ郷の背中を見つめていた。 部活時間が終わり、活付けをしたいた時だった。宮ノ郷が小声で後で話があると耳うちしてきた。だから春浦が帰った今も、副部長の仕事に付き合っている。 「歩きながら話しましょうか」 そう言って、幼馴染の少女は歩き出した。 その黒髪を追って、僕も続く。 「話ってなんだ?」 「春浦さんのお姉さんのことよ」 なんとなく、そんな気がしていた。 「……やっぱりいるのか」 「そうよ」 それで少しだけ安心する。 「春浦さんのお姉さんはね、春浦澪さんといってね、文芸部の先輩なの。部長だったらしいわ」 「そうなのか」 知らないフリをする。そっちの方が自然だと思ったからだ。
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