第一章

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文芸部部室の扉を開けると、風に揺れるカーテンが目に入った。 爽やかな青色をしたそのカーテン布は、ちょうど開けられた窓の中間を区切るかのように、中途半端に引かれている。 今日は風があまり吹いていないはずなのに、どうして途切れることなくカーテンが揺れているのだろうか。 疑問に思いつつ何となく部室を見渡してみると、窓に近い壁の方に白い扇風機が置いてあるのを見つけた。きっとカーテンが揺れている理由はこの扇風機だろう。真新しそうなそれは部室全体に風を送っているわけではなく、ある一点に向かってプロペラを回していた。 長細い部屋の一番奥。長机をくっつけて二つ並べたちょうど境目にノートパソコンを載せ、なにやらカタカタとキーボードを打っている女子生徒。副部長である宮ノ郷琴音に向かってせっせと風を運んでいるようだ。 風の影響で、宮ノ郷の長くて綺麗な黒髪が揺れている。 お勤め、ご苦労様です。なんて心の中で扇風機に敬礼なんてしてみながら、扉を閉めていつもの定席に向かう。宮ノ郷から見て左斜め前の席だ。 机の上に鞄を置くと衝撃を感じたのか、宮ノ郷が顔を上げて僕を見てきた。よく見てみると、彼女は耳にイヤホンを挿しているのがわかった。 きっと作業に夢中になっていたのと、耳にイヤホンを挿していたせいで僕の存在に気がつかなかったのだろう。 「いつからいたの?」 イヤホンを外しながら宮ノ郷が訊いてきた。外したイヤホンから微かに音が漏れていたけれど、宮ノ郷が胸ポケットから出した携帯音楽プレイヤーの電源を切ったため、すぐに音は消えた。 「今来たところ」 「声をかけてくれればよかったのに」
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