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「集中してるみたいだったし」
「アンタが気を遣うなんて、何かいいことでもあった?」
「いいことなきゃ気を遣わないと思ってるのか? 僕だってお前に気を遣うことだってある」
宮ノ郷は僕の幼馴染で、普段なら気なんて遣うことのない間柄であるから、こう言われるのも仕方がないのだけれど。
「それはそれは。どうもありがとう」
「どういたしまして」
宮ノ郷が嫌味ったらしく言って来たので、こっちも嫌味ったらしく返してやった。
「小説か?」
ノートパソコンを指差し、宮ノ郷に訊いてみる。そうしながらパイプ椅子を手前に引いて、そのまま腰を下ろす。パイプ椅子特有の軋む音がした。
宮ノ郷は小さく頷いてみせた。
「正確に言えばライトノベルだけれど。……文集に載せるの」
「あー、文集ね」
「アンタもそろそろ始めないと、間に合わないわよ」
「まるで僕がまだ始めてないみたいに言うなよ」
「じゃあもう始めてるの?」
「……まだです、ごめんなさい」
「やっぱりね」
この幼馴染という奴は本当に困る。僕がどういう状況にあるか、言い当ててしまうことがあるからな。本当にやめて欲しい。
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