第一章

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「なんかさ、何やろうか思い浮かばないというか」 特にやりたいことがあって文芸部に入ったわけではない僕にとって、この部活で自分が何をするべきかがわからない。 入ったばかりの頃は他の部員がやっていることを、色々と真似してやってみていた。絵、漫画、論評、そして宮ノ郷が書いている小説。やってはみたけれど、どれも自分にはできなかった。向いていないとでも言うべきだろうか。 「あたしが勧めてしまったのだし、なんだか申し訳ないわね」 言いつつ、宮ノ郷は手元にあったリモコンを操作した。すると、扇風機の首が回転を始めた。結果、僕の方にも涼しい風がやってきた。 リモート式の扇風機とは、また高価そうな代物だな。きっと宮ノ郷が持ってきたのだろう。彼女の家は裕福だからな。本人は否定しているけれど。 小さな声でお礼を言ってから、宮ノ郷の言葉に返事をする。 「いいよ。やりたいことがなかったのは本当だし、退屈しているよりかはマシだ」 「それならいいのだけれど」 やりたいことなんて一つもなくて、放課後はバイトでもして過ごそうと考えていた。そんな時、宮ノ郷がやりたいことがないなら文芸部に入ってみたらと提案をしてくれた。 それで体験入部をしてみたところ、なんだか居心地がよくなって。気がついたら入部していた。 というのが、僕が文芸部に入部した経緯だった。 本当に何も考えることなくここにいると言っても間違いではないはずだ。 だから。こういう活動をしなければいけない時、何をすればいいのかが思い浮かばないのだろう。 何も考えずに過ごすということは、結果的に自分自身を追い込むことに繋がる。現状に至って、そのことを学んだ。
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