第一章

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だけど後悔なんてしている場合ではなくて、文集に載せる何かを決めて完成させることを考えないといけない。そうしないと部員全員に迷惑がかかってしまう。これは僕だけの活動ではなく、集団の活動なのだから。 それに。いくらやりたいことがないからと言って、入部してしまったからには、自分のやるべきことはやらないといけない。 いけないのだけれど……。 何をやろうか、全く思いつかない。どうしたものか。 文芸部とは文字通りの文章を書く活動だけをするのではない。文芸とは文学と芸術という意味で、芸術に関係することであれば基本的に何をやってもいい。 だからこの部活の部員たちは、絵を描いたり、漫画を描いたり。小説やライトノベルを書いたり、論評を書いたり。様々な活動をしている。 この何をやってもいいという部分が、僕にとっては難しかったりするのだ。 「……どうしたもんかな」 「そうね……。随筆なんてどうかしら」 「随筆? 枕草子とか徒然草とかのやつか?」 「そうよ」 「そんなもの、僕に書けるとは思えないが」 「アンタならできると思うけれど。というより、アンタだからここできそうな気がする」 僕だからこそ、できる? どういう意味だろうか。 「あたしはね。自分が日頃思っていることを日記みたいに書くのも随筆の一つだと思うの。エッセイとも言うのだし、間違いではないはずよ」 「……、」 日記みたいに、ね。よくわからないのだけれど、随筆というのはそんなに簡単なものなのだろうか。
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