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「そういうの、アンタが得意なことでしょ?」
「でしょって聞かれても、よくわからないんだが」
「だって、昔から考えることが好きだったじゃない。どうでもいいことを深く考えて、それをあたしにつらつらと話して聞かせてくれたこと、忘れてしまったの?」
確かに、そんなこともあったかもしれない。しっかりと憶えているわけではないけれど、微かに記憶がある。
だけど本人でも微かにしか記憶がないことなのに、宮ノ郷はよく憶えていたな。
なにはともあれ、随筆か。本当に僕なんかにできるのだろうか。
「随筆ね、少し考えてみる」
「そうした方がいいと思うわ。と言っても、時間は多くないのだけれど」
「そうだな。夏休みが終わるまでだもんな」
小学生や中学二年生くらいまでの時は、夏休みは長いものだと思っていた。けれど今は夏休みが短いと思える。
社会人に比べればもちろん長いだろうけれど、学生の夏休みだって言うほど長くはないと思う。
だから本当は今からでも作業を始めないといけない。ただでさえ慣れていないことなわけだし。
今さら言ったところで遅いかもしれないけれど。
「ありがとうな」
「……アンタさ、お礼だけはちゃんと言うのよね。不思議なことに」
「どういう意味だ」
「そのままの意味よ」
そう答えながら宮ノ郷はパソコンに目を戻すと、作業を再開させた。
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