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いつも言われてる事だった。
自分は死んだ父の事件を追ってる。
それは真人が警察に入った理由であり、捜査一課に居続ける理由であった。
「兎に角、今回は単独行動なんてすんなよ?」
平次が念を押すように言う。
一課内での自分の評価がどうであるかは知っている。平次以外の刑事達とは、一年は口をきいていない気もする。
それがどうした。
真人は思う。自分にはやらなければならない事がある。
捜査一課、いや、警察全体が巨大な組織であり、命令系統、捜査手順まで上の指示で動くのが当たり前である。
しかし、真人はそれを拒んだ。いや、意に介していない。
やらなければならない事があるのだ。
真人は父が死んだ事件を追っていた。
「じゃあ、くれぐれも無茶はするな」
平次は真人と同じぐらいの刑事と共に去っていった。その刑事は真人に声も掛けずに、平次に追従しながら去っていく。
そんな態度には慣れ過ぎていて、一々怒りを覚える事もない。
一課内全体が自分を居ないものとして扱っている。
そんな事は真人にしてはどうでもよかった。
自分にはやらなければならない事がある。父の死の真相を確かめる。
一課に居るのも、それが一番の近道だと思ったからだった。平次には警告されたが、真人は一人で動く。
なにせ一課内には、真人を相手にするような刑事は平次を除いていないのだ。
父親の事件だけを追って普通の事件には関わらない。そんな時には資料室等で当時の事件を読み漁っていた。
浮いている。一課内での自分の立場も真人には分かっていた。そういう空気を読むことも、普通には出来るのだ。
自分にはやらなければならない事がある。
真人はそんな一課内の雰囲気を気にせずに、ただ父親の事件を追いかけていた。
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