銀ノ王様『始まり』

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    近付いてくる紅羽の顎に手  がかかり、期待に胸を弾ませ  たのは一瞬であった。   “興が冷めた”その一言が  終わりを意味していた。   捕らえた顎を押し返し、貧  弱な紅羽の肩を横に払えば、  筋肉のない小柄な身体は容易  くベッドの上に転がった。   ディルクはまるで何事もな  かったかのようにベッドの端  に移動し、床に両脚を付ける。  「帰れ」   何の感情も乗せられていな  い一言だった。紅羽は自分の  耳を疑った。  「今、なんて……」  「帰れ。もうお前に用はない」   紅羽は首を横に振る。全身  の血の気が下がって眩暈が起  きた。  「や、嫌だ……僕、何でもす  るよ?ディルクの言うことな  ら何でも聞くからっ」   ただ必死だった。一度現実  になった夢を手放したくない、  ただその想いだけだった――
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