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何をどう言えば信じてもら
えるのか。いや、どう言って
もこの状況では、純粋に好き
だと言ってもディルクは聞き
入れはしないだろう。
紅羽は悲しくなる。上手く
説明できない自分に、人を信
じることを知らないディルク
に。悲しくて涙が溢れた――
「なんにもいらない、僕なに
もいらないからっ!だから、
許して!」
紅羽はもうこの場に留まる
勇気はなかった。床を蹴って
逃げ出した。
「待っ――」
ディルクは後を追おうとし
た。誓約書も書かず、本名も
連絡先も知らない相手を野放
しにしては、自分の害となる
かもしれない。そう思ったか
らだ。だが――
「チッ」
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