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寝室から出た所で足を止め
た。どう見ても女に見える紅
羽でも、歴とした男子である。
急いで服を着たとしても、
追い付くのは無理であろう。
ディルクは無駄なことはし
ない主義だ。不安を残すこと
になるが、無駄に焦って追い
かけるなどと、みっともない
ことは出来ない男でもある。
寝室に戻り、背中からベッ
ドに倒れた――
「紅羽、か……」
ディルクの脳裏にその名が
深く刻まれた。
――‐‐
一方、その紅羽は走りつづ
けていた。アスファルトの上
を裸足で走り、皮が剥けて血
が滲んでいた。
車で連れて来られたので、
今居る場所すら良く分からな
い。
後ろを振り向き誰も追って
来ないことを確認して、漸く
足を止めた――
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