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「どうぞ、この奥です。扉の
鍵はここに……」
「近付くのも恐ろしいのか?」
神父は明らかに怯えている。
鍵束の中から鍵をひとつ外し
てオーベルの革手袋の上に置
いて、胸の前で十字を切る。
「いいえ、いいえとんでもな
い。あれはこの世にもたらさ
れた祝福に違いありません。
ただ、私のような弱い人間に
は影響が強過ぎるのです」
「ほう。呪われた少年は神の
使わした天使でもあるのか。
面白い」
オーベルの心は益々踊った。
少年の噂を聞いたのはひと月
前のことだった。旅の行商人
がメイド達に聞かせていたホ
ラ話――だが、その噂はまた
たく間に広がった。
爆発的に広まったのにはそ
れなりの訳がある。
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