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『病院帰りに見かけて・・・。』
「ねぇ、これめんどうじゃない?」
『いえ?別に・・・。』
「そう、やっぱり喋っちゃダメって言われてるの?」
『・・・いえ。』
「あのさ、いちいち黒丸つけなくていいよ、分かるから。なんとなく。」
『るみと話せましたか?』
「う~ん、喧嘩になっちゃった。」
そう言った瞬間、麻衣さんは悲しそうな顔になった。
「ああ、大丈夫!私が馬鹿みたいに聞いちゃったのが悪いんだから。でも、病院帰りってまだ、どこか悪いの?」
『アイを消しに・・・。』
「アイ?」
『私のもう一つの名前。私は・・・多重人格障害も負ってるんです。』
「え、時々ドラマでやってるあれ?じゃあ、麻衣ちゃんも結構性格が変わるときがあるの?」
彼女はうなずく。
『るみと別れることになっちゃったのもアイのせいなんです。』
その文面を見ながら、私は本当に何があったんだ、麻衣さんの過去ってと思った。失語恐怖症に、多重人格?そんなにかかっちゃうほどの過去。想像するだけで少し恐ろしい。とりあえず、失語恐怖症を持ってるのはこの「斉藤麻衣」の時ってことだな。
ん?ちょっと待てよ。確か喧嘩別れする前、るみはこんな事を言っていなかったっけ?
ー彼女が対人恐怖症?そんなわけないじゃない!私が見た時の彼女は!ー
まさか、るみが見たのは麻衣さんじゃなくてアイさん?
「ねぇ、麻衣さん、変な事聞いて申し訳ないんだけど正直に答えて。」
麻衣さんは首を傾げたが頷いた。
「麻衣さんはるみに昨日会った?多分病院帰りころ。」
麻衣さんは首を左右に振る。
「仮にもう一つの人格が出てしまったら、その時の記憶は残ってる?」
すると、麻衣さんは鞄から一枚の写真を取り出した。ビデオの一場面をそのままプリントしたような写真の中で鋭い目つきでこちらを睨んでる麻衣さんがいた。
私がそれに気を取られていると、また麻衣さんからの文章がきた。
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