アイ現る

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私が、麻衣さんの病気の事を聞いてから早くも一週間が過ぎた。あれから、麻衣さんと会えることは少なくなった。マスターから聞くところによると、4日ほど前から体調を崩して、自室で寝たきりだという。元々体が弱い体質だからと笑いながらマスターは言っていたが、私は心配だった。麻衣さんの病気に何か変化があったのではないか、それを考えるとぼんやりしてしまって、授業中も上の空になってしまっていることがあった。今日もそんな感じで、ただただ時間だけが過ぎていき、あっという間に放課後になった。 私の周りの変化はもう一つある。るみと話さなくなった。というより、双方が避けていると言った方がいいのだろう。今の状態でるみと話しても、また喧嘩別れしそうな気がする。もう少し、るみの気を引けるような事がなければ・・・。 一週間経って、私は演劇部に入部した。そこで六時ごろまで活動して、坂を下って、麻衣さんを会ってから帰る。それが私の過ごし方になっていた。といっても、最近は部屋にこもっている麻衣さんに会えてはいないのだが。そして、終業のチャイムが鳴り、私はまた、麻衣さんの元へ向かった。 「いらっしゃいま・・ああ、ともえちゃんか。今日は麻衣、体調よさそうなんだ、是非、君と会いたいって。」 「本当ですか!」 「ああ、奥にいるよ。」 そう言われるやいなや、私は早口におじゃましますとだけ声をかけ、店の奥に入ると、その先にある机の傍でうずくまっている麻衣さんがいた。 「麻衣さん、風邪まだひどいんじゃ?」 そう聞くと、紙を渡してくる。 『大丈夫です。それより毎日来てくれたそうですね。ありがとうございます。』 そうは言っても、すごい汗だ。私は半分疑いながらも返した。 「いいよ、そんなの。私みたいなバカは勉強する気もあまりおきないんだから。それより、ごめんなさい。るみとはまだ仲直りできてなくて。でも、いつかはちゃんと二人の誤解、解いてみせますから。」 『あまり無茶しないでください。それで二人がずっとこのままだったら。』 「大丈夫だって、私こう見えて結構強いですから。」 しかし、麻衣さんはまだ心配そうな目をしている。 「麻衣さん、そんな顔しないで下さい。私が勝手にやっていることです。私、気になったらとことん突き止めたくなっちゃ・・・麻衣さん?」 麻衣さんが急に頭を抱えてうずくまりだした。そして、汗が額に浮かんできている。
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