それぞれの出会い

2/5
前へ
/20ページ
次へ
入学式も終わり、私たちは校門の前で自転車に乗って話していた 「入学式終わった~。」 私の前には、ともえが校門を出てから初めての第一声を出した。 「私が高校に入学して最初に思ったこと言っていい?」 私が目で何?と訴えると彼女は返す。 「・・・何で入学式翌日からテストあるのよ!ねぇ、おかしいと思わない?るみ!」 「いや、それは私に言われても。」 「何で!?」 「進学校だから?」 私は自信無げに返事をすると、彼女はとたんにがっかりした顔をした。どうも、真面目な返しだったことがつまらなかったようだ。でも、仕方がない。私たちが進学した坂の上女子高校はその名の通り坂の上にある高校で私たちが住んでいる地域ではそれなりに名がある高校だ。名があるといっても大学への進学実績が高かったり、部活が強豪というわけでもない。むしろ偏差値は平均並だ。しかし、決して素行が悪そうな、いわゆるギャルでも合格できるわけではないので、そこそこの学力がある女子はここを狙ってくる。 「るみはまだいいよ。合格平均点以上で合格したんだから。私はとってもギリギリで合格したようなものだよ?嫌だよ、入学早々『バカだ、こいつ』なんて思われるの。そうだ、るみ!一緒に勉強しよ!二人寄れば文殊の知恵って言うじゃん!」 「三人寄れば、でしょ?」 「・・・とにかく、勉強教えて!」 ともえはここまで慌てている理由が私は分からない。テストといっても範囲は中学の範囲、言ってみれば入試と同じだ。それと同じように対策して勉強すればいいはずなのだが・・・。 私がそう言ったら彼女は、あんなに苦しい時間はもう嫌なのだ、と言ってきた。要は彼女のわがままか。私が半ば飽きれて彼女を見ると当の本人はにこっと笑っている。笑ってごまかすつもりだなと私は心の中で苦笑していた。 「そういえば、坂のふもとにコーヒー屋さんがあったし、そこで少しだけやってこう?」 ともえは提案するだけして、先に行っていると一気に自転車で坂を下っていってしまった。本当に落ち着きがないんだからと呟いて追いかけようとした時、校門の前の桜に目がいった。 「入学式の日には咲いてほしかったな、桜。」 今年は厳しい寒さが続いて桜の開花が遅れていた。むろん、この校区だけ例外なんてことがあるはずもなく、依然としてつぼみがついているだけだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加