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30分後、マスターはわざわざ店を閉めた。よほど、この娘さんの事が大切なのだろう。三人がいる空間の中で彼は語り始めた。
「彼女は娘の麻衣だ。こいつは単純な無口なんじゃなくて、その、失語恐怖症って言って、自分の言葉で相手を傷つけてしまっているのではないかと思って、自然に話せない病気のことなんだ。」
「でも、私、何にも傷ついていませんよ?」
「いわゆる対人恐怖症ってやつかな。他の人の前での失敗や経験とかをきっかけに、人前で症状が出ることを極度に恐れてしまうんだ。」
「そうなんですか?」
そんな病気を持つ彼女とるみとの接点はなんなのか、私の中にあった興味は確実に濃いものとなっていた。
「それで麻衣さんと、るみってどういう関係なんですか?」
私が問いかけたその時、ラインの音が私の携帯から発せられた。
何なのよ、と私が会釈してわびながら文面を見ると母からだった。テスト前にどこまで寄り道してるんだ、早く帰ってこいという内容だった。
するとマスターが今日は帰ったほうがいいみたいだね、と切り出しその場はお開きになってしまった。しかし、私はどうしても諦めることができず、この事を明日るみに聞いてみることを決意した。おせっかいなのは分かっている。でも、何とかできるならしてあげたい。
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