第2話

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私は目線を上に、考える。 「それを晋兄が聞いたらかなり喜んだかも。でも調子に乗られると困るから、俺は黙っておくね」 そう言って笑うと、飲み物を手に取り歩き出す。 私は頷き、再び洗い物へ取りかかろうとした。 「あ、あれ!?恭兄。…いたの?」 …え?…恭兄って…!? その言葉を耳にして、私は思いきり後ろへ振り返った。 そこには、キッチンの中へ入ってくるオーナーの姿が。 うそ!? もしかして、聞かれてた!? 口を大きく開けていると、オーナーが入ってくるその後ろで、龍くんがごめんねのポーズをとっていた。 そんなぁ…、冗談やめて…。 開いたままの口をキュッと閉じ、オーナーの顔色を伺う。 オーナーはオーナーで、そんな私を見つめてきた。 こ、これは、先に謝ったほうがいいのでは!? そう受け止めた私は、すぐに頭を下げた。 「すいません!」 「…ん?」 「な、生意気な感想なんか口にして…。あ、あの、私は本当にどっちのケーキも美味しくて…」 あたふたしながら説明していると、オーナーがため息ついてくる。 「お前な、俺がそんなことで怒るとでも思ったのか?」 「…え?」 「味覚なんて人様々、好みも違えば感性も違う。お前がどんな感想を持とうと、それは自由だろ」 そう言って、オーナーは椅子へ腰かけた。 そっかぁ。よかった。 怒られるとばかり思っていた私は、ホッと息をついた。 きっとオーナーみたいな人を、大人と言うのかも。 「まぁ、機嫌は損ねるが」 ……前言撤回。 そして左手で頬杖つくと、さらに続けてきた。 「晋は俺よりも、小さい頃からシャンテイへの思いが強かった。高校卒業するとき、シャンテイで働きたいって何度迫られたことか」 「え?そうなんですか?」 「ここにいてもお前の腕は伸びない。そう言って追い払ったんだ。…というか、めんどくさくて、俺が教える気がなかった」 …オーナーって、子供みたいなときもあるんですね。 「他の店に弟子入りすればいいものを、何か勘違いして、『それじゃシャンテイで働けないだろ』って反発してくるし。 あいつなりに考えたんだろうな。卒業後すぐにいろんなバイト始めて、金貯めたかと思ったら、一年後、勝手に専門学校に入ってたんだ」 そして、困ったような顔をしながらも、オーナーが笑っていた。
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