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「あ、おはようございます!今日は、何にしますか?」
「ん…、カフェオレ」
「はい!」
シャンテイでお世話になりはじめて1ヶ月。
この生活にだいぶ慣れてきた私は、毎日を楽しめるようになっていた。
オーナーの前にカフェオレを出し、今日はどんな感想がもらえるのかと、わくわくしながら待ってみる。
すると、オーナーはカップを口に運ぶも、片眉上げて私にデコピンしてきた。
「痛っ」
「笑いながら待つんじゃない。飲みにくいだろ」
あら?私、笑ってた?
オーナーは椅子へドスッと腰掛けて、新聞に目を運んでいた。
その様子を見届け、私は朝食の用意へ取り掛かった。
さあ、今日も1日、元気にシャンテイで働かなくては!
お店に立つことにも慣れてきた私は、だいぶゆとりが生まれていた。
龍くんに指示されてもバイトくんに指示されても、立ち止まることがなくなり、事はスムーズに流れていく。
面倒をかけることがなくなっただけでも、ひとつの成長だ!なぁんて1人実感していた。
「柚ちゃん、ごめん。恭兄のところに行って、『苺の王冠』頼んできて。そろそろ切れそうだから」
「あ、はい!」
そして私はお店から厨房へ。
ドアをノックして返事を待つ。
と言うか、朝や閉店後は何度も出入りするものの、日中ここへ来ることが初めてな私は、中へいきなり入っていいのかわからなかった。
しばらくしても、返事はない。
あれ?…入っていいのかな?
ドアをそっと開け、中を覗いてみる。
部屋の中央にある作業台で、オーナーは静かに手を動かしていた。
声をかけようとしたが、私はその言葉を慌てて飲み込んだ。
「…っ」
思わず手を口元へ運び、その姿を見つめていた。
普段は無表情に近いオーナーなのに、今の横顔からは優しい温もりが感じられた。
ケーキを扱うその手は柔らかくて、とても輝いているようで。
これが、パティシエ…。
心の中で呟いていると、オーナーは手を止めた。
「…暇なのか?」
その言葉にハッとする。
「あ、いえ!あの『苺の王冠』を…」
「出来てる。運べ」
「あ、はい!」
朝のオーナーとは違う顔と雰囲気に、なぜか心拍数が上がる私だった。
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