第2話

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頬を熱くしながらも、私は龍くんにペコッと頭を下げた。 「き、昨日は、ごめんなさい」 「アハハ。そんなこと?」 「ホントに、あの、…ごめんなさい」 「柚ちゃんが謝ることじゃないよ。あんなとこで手を出した俺も俺だし。…それより、恭兄のとこ、戻ったら?」 「あの、彼女さんにも、ごめんなさいって伝えてもらえますか?」 そう言うと、龍くんはニコッと笑い、部屋のドアを開けた。 「さきに着替えしちゃうね。朝食になったら教えて」 そう言って、部屋の中へと入っていった。 私はドアをしばらく見つめた後、階段へ向きを変えた。そして降りていく。 だ、大丈夫だったかな? これで、よかったかな? でも、他にどうすることもできないもんね。 「…はぁ…」 一息ついては、キッチンへと戻っていったのだった。 朝の食事を穏やかに取った後は、いつものように仕事が待ち受けていた。 ショーケースに出来上がったケーキを並べ、お店を開店モードへと切り替えていく。 電車の時間になっては、晋くんは慌ただしく店を出て学校に向かっていった。 朝のこの時間は、私にとってもあっという間だ。 今日は、大学が午後からの龍くんと一緒に店に立った。 若干気まずさは残るものの、そんな雰囲気を作らない龍くんのおかけで、いつものように楽しく仕事が進む。 というか、そんなことがあったのにも関わらず、何も変わらない龍くんが大人にも見えて仕方なかった。 私は一睡もできなかったっていうのに。 これが、経験の差というものなんだろうか? キスはもちろんのこと、男の人に抱き締められたことなんて一度もない。 昨日の男女の姿を見て興奮している私って、やっぱり子供なのかな? 人を好きになる感覚って、どういうことを言うんだろう。 全く恋愛経験などしたことがない私にとって、そこはまさに未知の世界。 龍くんはいいなぁ。 そして再び頭の中は妄想で広がっていく。 っていうか、この妄想は止めようって。 1人で自分に突っ込んでいると、お店の入り口が開く。 「いらっしゃいま…」 顔を上げてそこまで言葉にしておいて、続きが出てこなかった。 だからさ、昨日の今日で気まずいって、何度思えばいいんですか? 入ってきたのは、龍くんと密着していたあの女性。 私と目が合うなり、きつく睨んでくる。
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