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うっ…、やめて。反省してるんだから、そっとしておいて。
そんな心の声は届くはずもなく。
「あ、まどか。悪い、まだ用意できてないんだ。座って待ってて」
龍くんがそう声をかけると、女性は私からフイッと視線を外し、椅子に腰かけた。
そうだ、たしかまどかさんって言うんだったね。
どうしたものかと困っていると、龍くんがコソッと呟いてきた。
「柚ちゃん、ごめんね」
その声かけに、私は思いきり左右に首を振った。
するとニコッと微笑み、家の中へと向かう。
さて、私はどうしたものか。
ここは、そっと時間が流れるのを待ったほうがいいのでは?
そう思い、何事もなかったかのようにお店に立っていた。
すると、かなりの圧がかかったような眼差しを感じ、振り向かないわけにはいかない状態に。
額から汗を滴ながらゆっくり視線を運ぶと、まどかさんは思いきり私を睨んでいた。
…あぁ、これは、謝れ的な?
私は視線を泳がせた後に、一度咳払いをした。
そして、ゆっくりまどかさんの元へ近づき、ペコッと頭を下げる。
「昨日は、すいませんでした」
その言葉にまどかさんは全く微動だにせず、私を見つめた。
「別に、いいけど」
…あ、そうですか。意外とあっさりしてますね。
なら、あんなに睨まなくてもいいのでは?
そう口にしてしまいそうになるのをグッと堪えていると、まどかさんが続けてくる。
「誰かさんのせいで雰囲気はめちゃくちゃで、あの後すぐ龍とバイバイすることになっちゃって、…でも、別にいいけどね」
あぁ、…やっぱりすんごい怒ってるっぽい。言葉にトゲが…。
私はオロオロしながらも、なんとか機嫌を直してもらわなければと考えた。
「あ、あの、お詫びに、何かケーキ食べていきませんか?私、おごります!」
ニッコリ笑顔で声をかけたが。
「いらない」
ん~、何か別なことはないか?
「それじゃぁ…、お好きなコーヒー飲んでいきません?」
「飲まない」
…うっ、くそぉ。
「でも、龍くんの彼女とわかったことですし、何か私から…」
「違う」
「……へ?」
違うって、何が?
今の返答の意味がわからず、私は目を大きくして次の言葉を待った。
するとまどかさんはさらにご機嫌斜めに。
「彼女なんかじゃないわよ」
「…え?………え~っと、…それって?」
「セフレ」
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