第2話

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オーナーが心を込めて仕上げたケーキを、丁寧に優しく運ぶ。 ケースに並べその顔ぶれを確認して、なぜかニッコリ。 きっと『苺の王冠』を初めて口にしたときに感じた優しさは、オーナーの気持ちの現れなのではないだろうか? そう思いながら、ケースを閉めた。 「なんだか柚ちゃん、最近は毎日笑顔じゃない?何かあった?」 「えっ!?…そうですか?」 龍くんにすかさず指摘され、なぜか頬が染まっていく。 そんなに笑顔でいるのかな? どこか照れながら首を傾げ、仕事の続きに戻っていった。 シャンテイの休日は、決まってオーナーと買い出しへ行くのが恒例に。 1人でも大丈夫なんだけど、まだオーナー的に心配だということなんだろうか。 食材を一緒に買い揃えたところで、シャンテイへと戻った。 特に楽しげな会話をすることはないんだけど、不思議なものでオーナーの隣を歩くのは嫌じゃなかった。 そしてふと顔を上げると、私たちの前に男女一組が歩いていた。 仲良さげなその様子から、カップルなんだろうなぁと想像できた。 女性の方はとてもにこやかに、楽しそうに歩いている。 柔らかそうな素材の白のニットに、フリルのミニスカートを合わせ、ヒールのあるブーツを履いていた。 …かわいいなぁ。 そう思っては、視線を自分の格好へ持っていき比較する。 ジーパンにロンティー、上にカーディガン、そして履き潰したようなスニーカー。 なんだかとても恥ずかしい気持ちになってくるのはなぜ? オーナーは隣に私がいて、恥ずかしくなってこないだろうか? そう思い始めたら、いつの間にか不安になっていった。 オーナーは、とても男前だ。 そんな人の隣を歩くときは、せめてキレイな格好したくないですか? 「あの、オーナー」 「ん?」 「私、ちょっと買いたいものがあって…」 すでにお給料を頂いていた私は、最低限必要な物だけを揃え、あとは貯金に回していた。 でも、少しくらいがんばったご褒美として、キレイな服揃えてもよくないですか? 私が声をかけて立ち止まると、オーナーも足を止めた。 「そうか、なら、俺は先に戻ってる」 「え!?戻っちゃうの!?」 「あ?」 「あ、いえいえ!何でもないです」 私は慌てて首を横に振り、オーナーの了解をもらって、1人で服を買いに再びお店へ。
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