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お店にやってくる女性で特定の人なんていなかったと思うし。
たまにサークルの集まりで夜遅いときもあったけど、女性の影なんてこれっぽっちも感じなかったけどなぁ。
……私が気づかないだけとか?
あれこれ頭を働かせては考える。
するとまどかさんは次に、私に疑いの眼差しを向けてきた。
「まさかあなた、龍と関係があったりするんじゃないでしょうね?」
「え!?私!?」
な、何てことを聞いてくるんでしょう。
「そんなわけないじゃないですか!?り、龍くんとは仲よくさせてもらってますけど、それはそういう関係とは全く別物です!」
「…あやしぃ」
軽くあしらうような呟きに、ムキになる私も私だろうか。
「本当ですってば!か、体だけの関係なんて…。そんなの私には無理ですから!誰かを好きになったこともないのに」
「は?…好きになったこともない?何中学生みたいなこと言ってるの?」
ちゅ、中学生って…!
頬がカッと熱くなった。
「しょうがないじゃないですか!誰かを好きになれるような環境にいなかったんですもん!」
人の気持ちも知らないで、言いたいことだけ言わないで。
鼻息をフンッとならしてしまいそうになりながらそう言うと、まどかさんが続ける。
「環境だぁ?そんなの誰かを好きになるのに関係ないじゃない」
「え?」
「好きなんて、突然やってきたりするものよ。私だって、気づいたのは抱かれた後だった。だから余計、今の関係をどうすればいいのか悩んでるんだけどさ」
それってつまり、まどかさんは龍くんが好きってこと?
「そんな…、好きだってわかってるのなら、関係を改めなきゃダメじゃないですか!?」
その言葉にまどかさんは、再び大きなため息をついた。
「あなた本当に恋愛経験ないのね。いい?口で言うのは簡単だけど、でも、体は好きな人を求めるものなの。一緒にいたくて仕方ない、触れてほしくて仕方ない、その関係が正しいものじゃなくても、抱き締められたくて仕方ない」
…一緒にいたくて…?
「笑顔見たら胸がキュンってしたり、大した話じゃなくてもそばにいるだけで楽しかったり、2人でいる時間があっという間に過ぎちゃったり…、それ以外にも感じ方はいろいろだけど、頭の中がその人でいっぱいになっちゃうのよ!…そんなふうに思えたこと、一度もないの?」
私は目を見開きながらまどかさんの話を聞いていた。
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