第2話

31/33
前へ
/33ページ
次へ
なぜだかわからないけど、その問いかけに、私の目の前にフッと現れたのはオーナーだった。 …え?何これ? なんでオーナーが? ちょ、ちょっと待ってよ。 勝手に頬が熱くなる。 返事も出来ずに目を泳がせていると、まどかさんがすかさず挟んできた。 「なぁんだ。そんな顔になるってことは、いるんじゃない」 「へっ!?」 「好きな人」 す、好きな人!? え? オーナーが? 「…あれ?なんだ、2人とも仲良いんだね」 いきなり後ろから聞こえてきた龍くんの声に、私は思いきりビクッと反応し、慌てて椅子から立ち上がった。 振り向くと、龍くんがニコッと笑う。 「柚ちゃん、あとは店よろしくね」 「あ、はい!」 「そろそろ行くか」 続けてそう言うと、まどかさんは椅子から立ち上がった。 すれ違う瞬間、私にポツリ。 「龍には言わないでよね」 私はハッとして、コクンコクンと何度も頷いていた。 その後私の頭の中は、今までにないくらいに混乱を招いていた。 私は、オーナーが好き? オーナーが好き?? オーナーが!? 忘れてしまえばいいものを、何度もまどかさんの言葉が耳元で繰り返される。 笑顔を見ると胸がキュン。そばにいるだけで楽しい。2人の時間はあっという間。 それってさ、まさにオーナーと一緒にいるときの私みたいじゃない? ってことはやっぱり、私はオーナーが好きだということなんだろうか。 仕事を続けながら考えることは、そんなことばかり。 それでもきっちり仕事を終え、閉店後、お店の中を片付けては厨房へ向かった。 ドアをノックする。 もちろん返事はない。これはいつものこと。 そっと開けては中を覗いた。 オーナーは作業台に寄りかかり、手に持っている書類みたいなものを見つめていた。 その横顔を見ては、再び自問する。 私は、オーナーが好き? その答えにたどり着く前に、先にオーナーが声をかけてきた。 「…入るなら入れ」 「あ、はい!」 慌てて中へと入り、ドアを閉めた。 そして、ゆっくりオーナーの元へ近づく。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加