第2話

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足を進める歩数と一緒に、胸の鼓動も高鳴っていくようだった。 オーナーの前で止まり、見上げてみる。 書類に目を通しているその瞳が、パッと私へ移ってきた。 「ん?どうした?」 目が合ってしまったその瞬間、鼓動はさらに大きな音を立てる。 その音に驚いて、私は顔を横へ反らした。 …こういうことなのかな。 誰かを好きになるって。 近くにいるとドキドキして胸がいっぱいになっちゃうんだけど、でも、もっとそばにいたい…みたいな? 「…おい、柚花?」 「は、はい!」 再びオーナーへ顔を上げた。 不思議そうに首を傾げて私を見つめるその瞳に、心がくすぐられる。 それは、とても気持ちいい感触で…。 オーナーはまたも書類へ目を移すと、話かけてきた。 「限定商品なんだが、ちょっと試しに作ってみたいものがあるんだ」 私は無意識に唇を噛み締めていた。 もっと私を見ててほしい。 もっと、見つめ合っていたい。 私はその気持ちに、素直に頷いた。 こういうことなんだ。 「それで今、その試したい果物を取り寄せてもらってて…」 ときには激しく揺さぶられることもあるけれど、胸の中がほんわか暖かくて、その人のことでいっぱいになる。 うん、こういうことなんだ。 「おい、人の話聞いてるか?」 「…はい。わかっちゃいました」 私は暖かい胸に手を当て、オーナーを思いきり見つめていた。 「…ん?」 瞬きするその瞳をしっかり捉え、口を開く。 「私、好きみたいです」 「…あ?」 いや、違う違う。 首を軽く振っては続けた。 「好きみたいじゃなくて、好きです!」 同時にオーナーの瞳が大きく開くのがわかった。 そして、すぐに片眉上がる。 「…おい?…お前、何言って…」 まだわからないですか? 「私、オーナーが好きです!」 そう告げたことで、さらにその気持ちに実感する自分がいた。 今まで、いったいこの気持ちはどこからやってくるんだろうってわからなかったんだけど、満足のいく答えに、ニッコリ笑ってしまった。 あぁ、だれかを好きになるって、なんだかとても素晴らしい。 晴れ晴れしていると、オーナーが一歩後退りするのがわかった。 その反応に、顔を上げてみる。 視線が重なったかと思ったら、オーナーはすぐにフイッと顔を背けていった。 …あれ? 「…オーナー?」
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