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そんなときにオーナーは、2人を完全無視して食事を続けていた。
エキサイトしていく会話は、止まることを知らないらしい。
「あ、あの…、とりあえずその辺で…」
なぁんていう私の声は、どうやら全く届いていないようで。
「だいたいさ、俺だっていろいろ学んできてるんだから、それを試させてくれてもいいはずなんだよ」
「ここはシャンテイ。恭兄の店だ」
「んなことは分かってる。そうじゃなくて、俺の腕も見てくれてもいいんじゃないかってこと。もしかして恭兄、俺の腕を見るのが恐いんじゃねぇ?」
その言葉に、オーナーが反応した。
いや、反応してしまったと言うべきか。
「…何が言いたい?」
低く静かに響くその声に、私は思わず背筋が伸びた。
「言い換えなくたってわかってんだろ?俺の腕、少しは見てみろってことだよ」
わぁぁぁ、なんか、めちゃくちゃ火花が飛んでるような…。
これ、どうするの?
するとオーナーも椅子から立ち上がった。
「くだらない話を続けるつもりはない」
そう言って立ち去ろうとすると、すかさず晋くんが続けてくる。
「…やっぱり、恐いんだな」
ボソッと呟いたその言葉に、オーナーは立ち止まった。
どう見ても、その表情はお怒りで。
「晋兄、やめろ」
龍くんが止めに入ったが、すでに事態を止めるには遅かった。
オーナーは晋くんの前にいき、胸ぐらを掴む。
「その口を止めるには、殴るしか方法はないか?」
キッと睨みつけるオーナーに対して、晋くんはニヤリと笑っているようだった。
「俺と腕を比べさせてよ」
晋くんがそう返すと、オーナーは掴んでいた胸ぐらをバッと離した。
「恭兄は夏の新商品に向けて、もう考案済みなんだろ?俺も考案したスイーツがある。どっちが次の新商品にふさわしいか、判定してもらおうよ」
「誰に?」
「ここに、龍と柚がいるだろ」
えっ!?私も!?
あたふたしながら2人を見つめていると、オーナーは足を運び始めた。
「ついてこい」
そう言ってキッチンから出ていく。
それを見た晋くんはめちゃくちゃ嬉しそうに、その後に続いていった。
えぇ!?今からやるの!?
口をぱっくり開けていると、龍くんはため息。
「…ったく、晋兄は…。柚ちゃん、ごめんね」
「い、いえ!…でも、いいんですか?」
「いいのいいの。いつものことだから」
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