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え!?いつもこうなの!?
「それじゃ、俺はごちそうさま」
そしてニッコリ笑顔を見せてくる。
椅子から立ち上がりどこへ向かうのかと見つめていると、龍くんはドアの前でこちらを振り返り続けてきた。
「俺、上にいるね」
「えぇ!?わ、私はどうすればいいんですか!?」
「あぁ、様子、見ててあげたら?観客がいたほうが2人とも燃えるんじゃない?」
か、観客って…。
「出来上がりそうなときに、俺も様子見にいくから」
そしてまた笑顔を見せると、龍くんは行ってしまったのだった。
キッチンに残された私は、どうしたものかとその場に立ち尽くす。
いつものことだっていうなら、2人きりにしてても大丈夫かな。
う~ん、でも、なんか心配だし。
私はとりあえず夕食の後片付けをし、洗い物はそのままにして、いそいで厨房へと足を運んだ。
ノックをして、そっと中を覗いてみる。
私に気づいた晋くんは、笑顔で声をかけてきた。
「あ、柚!こっちに来てたら?」
そして厨房の隅に椅子を用意。
私は、困りながらもそこへ着席。
2人はそれぞれ用意を始めると、手慣れた様子でスイーツを作り始めたのだった。
気まずい空気になるかと思いきや、2人とも真剣に手を動かしていく。
それぞれの世界に浸っているようにも感じられた。
こんなに近くで作るところを一通り見れるなんて、返ってよかったかもしれない。
やっぱりなぜか、自分の視線はオーナーへ向いてしまうのだった。
先に出来上がったのはオーナー。
少しして、晋くんも「出来た!」と続いた。
2人は私へ顔を上げると、それぞれのスイーツを差し出してきた。
私は目をパチクリ。
これってやっぱり、食べろってことだよね?
2人の判定をしなきゃいけないの?
かなり恐いんですけど…。
戸惑っていると、オーナーがフォークも差し出してくる。
その表情は、早くしろと言っているようで。
逃げるのは無理だと察した私は、そのフォークを受け取った。
「えっと…、それじゃ、オーナーのからいただきます」
そしてお皿を近づけ、スイーツを覗いた。
顔を輝かせているのは柑橘系のフルーツたち。
表面にたっぷりと乗っかっている。
フォークを入れてみると、生地は二色使いの層でできてるムース。
一口食べて、清涼感が広がった。
うん、美味しい。
思わずニッコリしてしまう。
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