第2話

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オーナーのスイーツを食べ続けてきて気づいたのは、優しさはもちろんだけど、その次に安定感があるということ。 どこか安心できるんだよね。 私の手はどんどんはかどり、スイーツを半分まで口にしたところで。 「おい、柚。食べすぎだろ」 「えっ、…あら?」 「次は俺の食べてみろ」 「は、はい!」 そして私は、晋くんのお皿を覗いた。 そこにあるのは、花?と思ってしまうような飾り付け。 タルト生地の上にある花びらを一口食べて、それは白桃であることに気がついた。 思わず目を見開いてしまう。 タルトの中はレアチーズ。 白桃にレアチーズって合うの?と瞬時に思ったけど、意外にもそこはお互いが仲よく手を繋いでいた。 晋くんの作るスイーツは、オーナーのと比べると斬新と言えるのかもしれない。 もちろん、美味しい。 ここですぐに晋くんは感想を求めてきた。 「どう?…うまいか?」 私は笑顔で返した。 「うん、美味しかったです」 「それで!?どっちがいいと思う?」 うっ…、やっぱりそこ? どちらかを選ばなきゃダメ? オーナーの視線も自分へ注がれているのがわかると、私は唇をキュッと噛み締めた。 目を泳がせた後、私は意を決して口を開く。 「どちらもいいと思います!」 その言葉に頭を抱えたのは晋くん。 「あぁ~、それじゃダメなんだって。どちらかって言ったらどっちだった!?」 うわ~ん…。だから私には無理だってばぁ。 泣きそうになっていると、厨房のドアが開かれる。 そこから顔を出したのは龍くんだった。 「どう?出来た?」 あぁ!良いところに! 私は助けを求める眼差しで龍くんを見つめた。 すると中へ入ってきて、それぞれのスイーツを黙って一口ずつ。そして、食した後に続けてきた。 「晋兄には悪いけど、俺は恭兄に一票。恭兄の味はシャンテイの味、シャンテイの味は恭兄の味だ」 なんとなくだけど、龍くんの言葉の意味が私にもわかった気がした。 どちらがどちらのスイーツを作ったか教えてもらわなくても、きっとすぐに見つけたと思う。 オーナーの味を。 それだけシャンテイは、オーナーでできているんじゃないだろうか。 私も龍くんの話に納得していると、晋くんはフゥとため息。 そしてオーナーの作ったスイーツを口に運んだ。
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