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うるさい目覚ましを止めて目を擦り、私はお布団から上半身を起こした。
まだまだ寝ていたいけど、今日も1日が始まる。
着替えを済ませ、一階へ降りた私は洗面台へ。
顔を洗いしゃきっとしては、キッチンに向かった。
そして朝食の準備に取りかかる。
ここでいつも考えることは、今日は何を飲みたがるかなぁ?だったんだけれど。
そう思っては、ため息をついた。
少しして、キッチンのドアが開かれる。
その気配に心臓をドキッとさせ、ゆっくり振り返った。
「…おはようございます」
「おはよ」
何らいつもと変わらないオーナーの様子に、はじめのうちは戸惑っていた。
声をかければ答えてくれるし、これといって避けられてる感じもしなかった。
でも、やっぱりどこか距離があいてしまったように思えるのは、続けてなされる会話に滲み出る。
「…あの、何飲みますか?」
「いや…、いい。自分で入れる」
好きだと告げたあの日以来、オーナーは私にコーヒーをいれさせてくれない。
態度はそんなに変わっていないのに、そのやり取りだけで涙が溢れそうだった。
食事の時間も、気にかけてはオーナーを見つめたりするのだけれど、全く視線が合うことはなく、淡々とした毎日が流れていた。
人を好きになったことも、気持ちを伝えたことも、その後の行方も、全てが初めての私にはどうしたらいいのか分からずに、悩みつきぬ日々だった。
そんな私の心は、仕事場にも現れてしまっているようで。
「柚ちゃん、ため息つきすぎ」
その言葉にハッとする。
「す、すいません」
龍くんにペコッと頭を下げては、頬をパチパチと叩いて顔を上げた。
「何かあった?」
「いえ、何でもないです!」
ニッコリ笑顔で返す。
すると、今度は龍くんがフゥと一息ついて続けてきた。
「何となくなんだけどさ。もしかして、…恭兄?」
「えぇ!?」
な、な、何で知ってるの!?
いきなりオーナーに触れてくる龍くんに、私は驚愕した。
鼓動が一気に加速する。
そんな私を見て、龍くんがクスクス笑いだした。
「あぁ、やっぱり!」
「い、いや、…あの、別に何でもないんですよ!そんな、た、大したことじゃありません!」
どもる私も私だろうか。
焦るな焦るな。
必死に平静を装ったが、どうやらそれは無意味なようで。
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