第3話

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うるさい目覚ましを止めて目を擦り、私はお布団から上半身を起こした。 まだまだ寝ていたいけど、今日も1日が始まる。 着替えを済ませ、一階へ降りた私は洗面台へ。 顔を洗いしゃきっとしては、キッチンに向かった。 そして朝食の準備に取りかかる。 ここでいつも考えることは、今日は何を飲みたがるかなぁ?だったんだけれど。 そう思っては、ため息をついた。 少しして、キッチンのドアが開かれる。 その気配に心臓をドキッとさせ、ゆっくり振り返った。 「…おはようございます」 「おはよ」 何らいつもと変わらないオーナーの様子に、はじめのうちは戸惑っていた。 声をかければ答えてくれるし、これといって避けられてる感じもしなかった。 でも、やっぱりどこか距離があいてしまったように思えるのは、続けてなされる会話に滲み出る。 「…あの、何飲みますか?」 「いや…、いい。自分で入れる」 好きだと告げたあの日以来、オーナーは私にコーヒーをいれさせてくれない。 態度はそんなに変わっていないのに、そのやり取りだけで涙が溢れそうだった。 食事の時間も、気にかけてはオーナーを見つめたりするのだけれど、全く視線が合うことはなく、淡々とした毎日が流れていた。 人を好きになったことも、気持ちを伝えたことも、その後の行方も、全てが初めての私にはどうしたらいいのか分からずに、悩みつきぬ日々だった。 そんな私の心は、仕事場にも現れてしまっているようで。 「柚ちゃん、ため息つきすぎ」 その言葉にハッとする。 「す、すいません」 龍くんにペコッと頭を下げては、頬をパチパチと叩いて顔を上げた。 「何かあった?」 「いえ、何でもないです!」 ニッコリ笑顔で返す。 すると、今度は龍くんがフゥと一息ついて続けてきた。 「何となくなんだけどさ。もしかして、…恭兄?」 「えぇ!?」 な、な、何で知ってるの!? いきなりオーナーに触れてくる龍くんに、私は驚愕した。 鼓動が一気に加速する。 そんな私を見て、龍くんがクスクス笑いだした。 「あぁ、やっぱり!」 「い、いや、…あの、別に何でもないんですよ!そんな、た、大したことじゃありません!」 どもる私も私だろうか。 焦るな焦るな。 必死に平静を装ったが、どうやらそれは無意味なようで。
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