第3話

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「柚ちゃん見ててすぐ気づいたよ。最近元気ないし、落ち込んでるみたいだなって。ため息ばっかだしね。しかも、恭兄のことばっかり見てない?」 その言葉に、さらにドキッとした。 「そ、そんなに、見てますかね?」 恐る恐る尋ねてみる。 「うん、かなり」 …あぁ、なんてことだ。 頭を抱えるのと同時に、顔が熱くなった。 「様子が変なのは柚ちゃんばっかりじゃないけどさ」 「…へ?」 「どうしたの?何かやらかした?」 「いえいえ!別に何もやらかしてはいない…と思うんですけど…」 「微妙な回答だなぁ」 …これって、相談してみてもいいのかな? 聞いてもらえたら、少しはモヤモヤが晴れたりする? でも、オーナーの弟に相談ってどうなんだろう? しかも、遊び人というレッテルが貼られた龍くんに…。 そこまでも頭を悩ませてしまった。 う~ん…、と唸りそうになりながら黙っていると、龍くんが続ける。 「あんまり悩むのはよくないよ。何かあったときは口から吐き出すのが一番。俺でよかったら聞くけど?」 ニコッと微笑む龍くんが、なぜか天使に見えた。 「うっ…、龍くん。ありがとう。…実は…」 言ってもいいかどうかなんて考えていたけど、話し始めると止まることはなく、結局胸のうちを全て龍くんに明かしてしまっていた。 最後まで吐き出すと、龍くんがウンウンと頷く。 「柚ちゃん、すごいね」 「…え?何がですか?」 「フツー自分の気持ちに気づいても、伝えるところまでは時間をかけるもんだと思うんだけど…」 「…え?!」 「いや、だってさ、好きな相手に『好きだ』って伝えるのって、難しくない?」 「うそ?!…そうなんですか?」 「うん。だから、すでに気持ちを伝えたって聞いて、正直驚いてる。しかも、相手が恭兄って…、かなりすごいと思うよ」 龍くんはクスクス笑いながら、そう話していた。 私は額から垂れる汗を止めることができなかった。 し、知らなかった…。 気持ちを伝えるって難しいの? そんな慎重になるもんなの? ってことは、え?じゃあ、やっぱり伝えないほうがよかったってこと? 頭の中をこんがらせていると、さらに龍くんが続ける。 「恭兄も、かなり驚いたんじゃない?」 そっか…。いきなり、だったもんね。 「…嫌だったかなぁ…」 ボソッと呟くと、龍くんは優しく首を振る。 「柚ちゃんに好きだって言われて、嫌な気持ちにはならないよ」
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