第4話

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その間オーナーは、私の隣へとやって来る。 龍くんが出て行くと、すかさず私に顔を近づけ、片眉上げて口を開いた。 「顔、赤くないか?」 「え!?そ、そうですか!?」 視線を泳がすと、オーナーはジイッと見つめてくる。 しばらくそうした後、次に私の頬に手を添えて呟いた。 「…ま、いいか」 へ?…何がいいんですか? よくわからずにいると、オーナーは椅子に腰かけた。 あ、もしかしてオーナーも休憩かな? 「お昼、食べますか?」 「ああ。柚花は?」 「私はさっき食べたとこです」 そう答え、オーナーの昼食を準備する。 「あ、それと、午後は仕事に出ますね」 「大丈夫か?」 私はニッコリ笑った。 「はい!なんかじっとしていられなくて」 その返しに、オーナーも優しく頷いてくれたのだった。 それから昼食の片付けを終えたところで、私はお店に立ち仕事についた。 多少体のだるさはあるものの、不思議と心は晴れ晴れとして常に笑顔でいれたのは、きっとオーナーのおかげ。 昨日まで、あんなに沈んでいたのにね。 そんな自分を思い返しては、今の満たされた心と体に、しあわせをも感じていた。 何事もなく無事にお店は閉店を迎える。 夕食の準備に入ると、晋くんが帰ってきた。 挨拶すると、目を見開き私に近づいてくる。 「柚!大丈夫か?!」 あ、そうでした…。 「はい!大丈夫です」 笑顔で答えると、晋くんも笑顔を返してくれて。 ホント、皆優しいんだよなぁ。 そんな居場所にすっかり定着してしまった。 夕食を3人で取ると、晋くんが私に声かけてきた。 「来週の6月3日なんだけど、学校でコンクールの予行することになってるんだ。だから前日は東京の友達んとこに泊まってくるから、飯大丈夫だから」 「あ、はい!前日ってことは2日ですね。何曜日だっけ?」 私は椅子から立ち上がり、飾ってあるカレンダーをめくった。 「たしか2日は月曜だったはず」 「うん、ホントだ。わかりました。予行なんかもするんですね!」 「学校側もそれなりに気合い入ってるってことかな」 そんなやり取りをして、食事を済ませた晋くんはお風呂へ入りに一足先にキッチンを後に。 オーナーも食事を終えた様子を見て、私は後片付けを始めた。 食器を洗ってしまおうかとスポンジを握りしめる。 すると後ろから、オーナーの手が私の体を優しく包んできた。
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