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やっぱり慣れていくまで、時間とか経験とか、必要ってことなの?
せっかくあんなすごいキス、してもらえたのに…。
気持ちよかったのに…。
途中、なぜか自分自身を見失いそうになってしまい、止めてしまった。
それは、あまりに初めての感覚で。
そこを乗り越えたら、今の私の体はどうなっていたんだろう?
オーナーと、もっとラブラブになれるのかな。
でももしかしたら、これがきっかけで、もっといっぱいキスされたり、体に触れられたりするかもしれない?
もしかしたらオーナーから、いっぱいしてきてくれるんじゃ…?
だとしたら、これって、かなり前進ってことなのかな?
そう思っては、1人でウンと頷いていた。
まだまだ熱い体を手でしっかり抱き締め、なんとか足を運び、私はキッチンの電気を消して部屋に戻ったのだった。
次の日の朝。
私は髪の毛をいつもより高めに結び、ご機嫌に朝食の用意をしていた。
そして、オーナーのコーヒーカップを取りだし、時計を見上げる。
「…あれ?…遅くない?」
そう思っているところにやって来たのは、晋くんで。
「おはよう!」
明るくて元気な声が部屋に響く。
「あ、おはようございます!」
「あれ?恭兄まだ?…珍しくねぇ?」
「…そうなんですよね。どうしたんだろう?」
「なんだ、仕方ないなぁ。俺が叩き起こしてきてやるか!」
そう言ったかと思ったら、再び開いたドアからやって来たのはオーナーだった。
「あれ、起きたのか?」
「晋、お前朝からうるさい」
ボソッと呟くと、前髪をかき上げて私の隣までやってくる。
すかさず声をかけた。
「おはようございます」
どこか照れてしまうのは、昨日のことをまだ引きずっている自分がいるからなんだけど。
でも、なんとか笑顔で挨拶できた。
オーナーは私を見つめ何度か瞬きし、ここでもボソッと呟いてきた。
「ん…、おはよう」
そしてカップを手にし、コーヒーを淹れはじめる。
「あ、私やります!」
オーナーからカップを受け取ろうと手を伸ばした。
が、なぜかスッと取り上げられる。
…あれ?
「大丈夫。お前は朝食の用意があるだろ?」
「あ、…はい」
そう返事をして、オーナーの横顔を見つめた。
気のせい…かな?
今、…避けられなかった?
そんな思いを過らせては視線をキッチン台に戻し、続きに取りかかった。
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