124人が本棚に入れています
本棚に追加
「えっ、ええ!?そ、そうなんですか?」
「アホらしっ。私、帰るわ」
そう言って椅子から立ち上がろうとした。
私はすかさずそのまどかさんの腕を捕まえる。
「あ~、待ってください!お願いです!私、これからどうしたらいいのかわからなくて…!あの、やっぱりオーナーは、怒ってるんですかね?」
すると思いきりため息をつかれてしまった。
そしてどこか適当に「そうね、怒ってるのかもね」と一言。
再び椅子にドスッと座ると、腕を組み、足を組む。
キッと睨まれ、私は背筋が伸びてしまった。
「そこは、するべきだったと思うわよ」
「え?…するって、何を…」
「セックスに決まってるじゃない!!」
え…、……せ、セッ…!?
私の顔はすぐに反応し、爆発した。
「そ、そ、そんな…、はっきり、言葉になんて、…し、しないでください!」
「はぁぁ…。どんだけ処女なのよ」
再びため息ついては、首を振る。
「オーナーは大人ねぇ。よくそこで止めてくれたわ。フツーの男ならがっついてたんじゃない?」
が、がっついてたって…。
私は目を泳がせた後、シュンと顔を下げた。
「嫌だとか、そんなんじゃないんです。ただ、頭がいっぱいになってしまったというか、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃって…」
「うまくオーナーがリードしてくれたと思うけど?…っていうかその前に、キス誘う時点でそういう流れになるって思わなかったの?」
「…思ってた、のかな…?」
「そういう曖昧な態度で誘ったら、オーナーに失礼よ」
その言葉に、私はさらにシュンとしていった。
どうしてあのとき、止めちゃったんだろう。
もう、このままずっと、触ってきてはくれないのかな。
涙をこらえ鼻をすすうと、まどかさんが続けた。
「次誘うときは、覚悟して誘うことね」
「…え?…誘うって、私から?」
「たぶんだけど、オーナーから誘ってくることはないんじゃない?」
驚きの発言に、私は目を見開いた。
「ど、どうしてですか!?」
「男がそんな何回も我慢できると思ってるの?」
「え、我慢って…?」
「こんな胸のでかい、食いごろの女を前に…。また止められでもしたら、たまったもんじゃないわよ」
…その女って、私のこと?
頬を赤らめながら、唇を噛み締めまどかさんを見つめていた。
でも…、そっか。
まだ、やれることがあるってことだよね。
立ち止まる必要ないんだ。
最初のコメントを投稿しよう!