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まずは気持ちを整理して、次は、ちゃんと覚悟して。
まどかさんは、そう言ってるんだよね。
心の中で、ウンと頷いた。
「あの、まどかさん」
「…何?」
「聞いてくれて、ありがとうございました」
「え?もう解決したの?」
「いや、そういうわけではないんですけど…。話を聞いてもらえて、少し希望がもてたというか…」
「ふぅん。…ま、別にどうでもいいけどね。それよりさ、あなた何の化粧水使ってるの?」
そう尋ねては、私に顔を近づけてくる。
「え、化粧水?…あ~、私、あまりそういうのこだわってなくて…」
というか、お金ないから一番安いのなんたげど。
「肌、キレイだよね。羨ましい。…ってか、もう少しお化粧したら全然見違えると思うけど」
「…お化粧ですか?」
「そう。それで、オーナーから誘ってきてくれるように雰囲気変えてみるの。格好とか、仕草も大事ね」
な、なるほど。雰囲気に、格好に、仕草!
私はウンウンと頷き、目を大きくしてまどかさんの話を聞いていた。
「あと、これ重要。いつ抱かれてもいいように、常に勝負下着を身につけるべし!」
「しょ、勝負下着!?」
「女子力を上げるには、決してどうでもいいような物を選ばないないことね」
そうなんだぁ…。ダメじゃん私!
「わかりました。がんばって勉強してみます!もっといろいろ教えてください!」
するとまどかさんはニッコリ笑った。
「あ~、なんか楽しみになってきた!」
「え?」
「初めてオーナーに抱かれたあなたは、お店でどんな顔して立ってるのかしらね?」
そんな言葉をかけられてしまい、私は背筋を伸ばして顔を真っ赤に染め上げていた。
まどかさんは、オーッホッホッホッとでも高笑いしてしまうのではないかというぐらい、上機嫌だった。
それからのこと。
オーナーとの距離をまた近づけたい私は、少しずつ少しずつ、スキンシップを取れるようにと努力していた。
キレイだと言ってくれた髪の毛を撫でてもらえるように、ちゃんと乾かしてからオーナーとお話しにキッチンへ行ったり。
寝る前のキスをしてもらえるように、「おやすみ」と言った後、オーナーの目を見つめてみたり。
それでもやっぱり、すべてスルーされるんだけど。
全てが歯がゆいままで、肩を落としていたときのこと。
もうすぐ閉店だという時間に、シャンティのドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
声をかけ、顔を上げる。
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