第4話

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全く想像もしなかったオーナーの行いに、私はすぐにパニックに陥った。 「あ、あの!?どうかしましたか!?」 「…どうかしましたかって…。抱き締めたいときに抱き締めちゃけないのか?」 そう呟いて、真顔で後ろから私の顔を覗いてきた。 キスとはまた違う、この距離感。 …近い。実に近い! 「いや、あの、いけないわけじゃないですけど」 私は目を合わせていられず、そっと流すように視線を反らしていった。 あぁ、なんだかオーナーと触れてる部分が熱くなってくる。 ドキドキしてる音、聞こえちゃってないかな。 そう思っていると、私を包んでいた手がゆっくり緩まり、腰のあたりまで下りてきた。 気づけばオーナーの唇が、私の耳へ触れてくる。 「んっ…、……あっ…くすぐったい…」 今度は腰にあった手が私の上着を捲りあげ、中へ潜り込もうとしていた。 目を見開き、慌ててオーナーの手首を掴む。 けれど、そんなのお構い無しとでも言うように、手は服の中をまさぐっていた。 「っあ…、あぁ…。お、オーナー?」 ちょっと待って。うそ、だよね? こんなとこでしたり、しないよね? 「…柚花」 耳元で低く響くその声に、かかる吐息に、体がゾクッと反応していく。 あぁ、まただ。 心とは裏腹に、下半身は妙にうずいていた。 やっぱり私、触られたがってるんじゃない? 息が荒くなってきたところで、再びオーナーの声がした。 「皿洗いも風呂も全部済ませたら、俺の部屋においで」 そう言いながらも、手が止まることはなく。 胸の先端を遊ぶようにいじっていた。 「明日は休みだし。体が平気なら、この続き、しようか」 私は、その場に立っているのがやっとだった。 だって、念願だったオーナーからのお誘いが、こんなにも色艶溢れているものだなんて。 今までの姿からの想像とはあまりにもかけ離れたそのギャップに、興奮しないはずがない。 顔が熱くて半端なかった。 目をギュッとつぶっていると、オーナーが続けてくる。 「柚花?…返事は?」 「あっ…、は、はい!」 するとオーナーは胸から手をそっと離し、右手で私の顎をクイッと上げて支えてきた。 そして唇を奪っていく。 軽く重ね、何度か動かした後に、離していった。 私の瞳を見つめ、クスッと笑う。 「またあとでな」 そう言ってその場から足を運ぶと、こちらを振り向くことなくキッチンから出て行った。 ドアがバタンと閉まる。
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