第4話

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まどかさんが怪訝な表情で、ジリジリと顔を近づけてきた。 「あの、待ってください!誤解なんです!」 そう言葉にしたのもつかの間、龍くんが家からちょうど戻ってきたようで。 「まどか、ごめん。待たせた?」 その声に、勢いよく龍くんへ顔を上げるまどかさん。 「ちょっと、龍!この子親戚なんじゃなかったの!?」 「あ?…あぁ………」 龍くんは事の流れをすぐ察したのか、視線を横へ流していった。 「もう、なんでそうやっていっつも嘘つくのよ!?ひどくない!?」 アハハと苦笑いする龍くんだったけど、まどかさんのご立腹は収まらないようで。 さきに店からスタスタと出ていってしまった。 「ああ、龍くんごめんなさい!」 「大丈夫、大丈夫。俺がそう言っちゃったのが悪いんだし。気にしないでね!とりあえず、後追ってくる」 そう言ってニッコリ笑うと、龍くんもお店を出て行ったのだった。 あちゃ~。 額に手を当て、息をついた。 まどかさん、怒ってたなぁ。すごい申し訳ないことした気分…。 大丈夫かなぁ。 2人を心配しながら、仕事の時間は慌ただしく流れていった。 それでも頭の中に残っていたのは、『両想いになったって、あれこれ問題は尽きないものなのよ』というまどかさんの言葉で。 というか私の場合、自分自身に大きな問題がある。 こういうのって、どうすればいいんだろう。 オーナーにきちんと、今までの自分というものを教えたほうがいいのだろうか。 …今までの、自分…。 胸の中で呟いては、首を左右へ振った。 …言えない。 言えるわけ、ないじゃん、ね。 キュッと唇を噛み締め、その後も真面目に仕事に取り組んでいった。 「柚花ちゃんごめん。オーナーに追加頼んできて」 「はぁい」 バイトくんにお願いされ、私は急いで厨房へ。 ドアをノックする。 間を少しあけてから、ドアを開けて中へ入った。 そこには、真剣にスイーツを作り上げていくオーナーの横顔が。 胸をキュンとさせ、声をかけるタイミングを見計らった。 フルーツを乗せたところで、先にオーナーが口を開く。 「追加?」 「あ、はい」 「ん、これいいよ」 その返事に頷き、私はオーナーの隣へ。 いつもながら可愛らしくていい香りを漂わせるケーキたちを前に、ニッコリ笑ってしまう。 すると、オーナーは続けてきた。 「店、忙しいか?」 「そうですね。でも、今は一段落って感じです」
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