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後ろへ振り返り目が合うと、オーナーはクスッと笑い、作業台へ視線を戻していった。
「は、はい。気を付けます!」
そう元気に返事をしては手に力を入れて、丁寧にスイーツたちを運びドアへ向かう。
厨房から出て、私はフゥと一息。
まだ胸のドキドキは続くものの、緊張から少しずつ解放されていった。
オーナーの大切なスイーツを運び終え、さらにホッとする。
そしてその後に考えてしまうのは、さっきのオーナーとのやり取りで。
キスとか、体に触られるとか、私が意識し過ぎなのかな?
もうちょっとこう、慣れた関係になるには、それなりに時間が必要だってことなんだろうか?
もっと早くラブラブになりたいというか、距離をどんどん深めていきたいと思うんだけど。
体や意識がそこまでついていってないようで…。
そこで浮かんできたのはお馴染みのあの2人。
龍くんとまどかさんは、抱き合うときって緊張しないのかな?
ごめんね、2人とも。勝手に題材にしてしまって…。
私には、参考になるようなものがないんだもん。
こんな自分にやれやれとため息ついては、仕事に戻っていったのだった。
もっと早く慣れるように、抱き締められたい、キスしたい。
そんな私の思いがどんどん強まる中、オーナーはそんな気配など微塵も見せることなく、2人きりの時間はあっという間に過ぎていた。
寝る前にキッチンで会話をすることが日課になりつつも、おやすみの挨拶は軽く触れるだけのキス。
朝のコーヒータイムも、頭を撫でられたりするだけだったり。
もちろん楽しいのは当たり前なんだけど、オーナーの笑顔を見れてうれしいんだけど、その先を求める自分がいることに間違いはないわけで。
この前の、想いが通じたときみたいな深いキスは、してくれないのかな?
唇が、おもいきり重なって、舌が、絡み付いて、体がすごく熱くなって…。
力が抜けちゃうくらい、気持ちよくて…。
あんなキスを、もう一回…。
そこまで妄想して、ハッと目を見開いた。
ちょっと待った!
今、私、なんてこと妄想してたの!?
ダメダメダメダメ!
思いきり首を左右へ振る。
そして、手にしていたお水を一気に飲み干した。
お風呂から上がったばかりということもあってか、なかなか体から熱が逃げていかない。
もう一回お水を飲もうかと思っていると、キッチンのドアが開いた。
やって来たその人を見て、再び体は熱くなっていく。
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