第4話

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そして離れると、ニコッと微笑んだ。 「おやすみ」 その笑顔がうれしいんだけど、でも…。 なぜか唇をムッと尖らせずにはいられない。 私はオーナーの手を取り、ギュッと握った。 目を大きくして私を見てくるオーナーに、ポツリと甘えてみる。 「…もう一回」 そして視線を外し、握った手を見つめては、もう一度口を開いた。 「もっと、キスして」 恥ずかしさで頬が熱くなる。 でも、おねだりしなきゃ、自分の部屋に戻らなきゃいけなくなっちゃうし。 ずっと、一緒にいたいのに…。 そんな思いになるのは、私だけなのかな? 寂しさこらえていると、繋いでいた手をグイッと引き寄せられた。 私の体は、再びオーナーの胸元へ。 すぐに大きな手で顔を包み込まれた。 「いいよ」 その返事に目を見開くと、顔はあっという間に近づいて。 私は慌てて目をキュッとつぶった。 唇が、再び重なる。 柔らかく、軽めに。 回りの空気もどこかふんわりで、不思議と私の心は落ち着いていた。 角度を変えてさらに優しく重なった後、オーナーは唇を離していく。 目を開けると、オーナーは私の額にコツンと額をつけ、頭の上に手を乗せてきた。 ゆっくり撫でて呟いてくる。 「…柚花。もう、部屋に戻れ」 その言葉に、私は目線だけをオーナーの瞳に運び、見つめた。 やだ。まだ、離れたくない。 そんな思いを込めて、そっと返す。 「…もっと」 そして唇を噛み締めた。 するとオーナーは額を離し、目の前で私を真っ直ぐ見つめ、軽く首を傾ける。 かと思えば、唇をすぐに塞がれていった。 軽いなんてものではなく、深く交差しあい、混じりあい、オーナーの唇が激しく動きだす。 「ふぁっ……、んっ……」 離れてはまたすぐに重なり、角度を変えてはまた塞がれて。 「…っ、…はぁっ…、ん…」 さっきまで落ち着いていたはずの心は、いつの間にか熱く鼓動を響かせていた。 舌が入り込んでくると、滑らかに絡み合う。 その感触に、思わず体にキュッと力が入った。 力を入れてないと、その場に溶けちゃいそうで。 オーナーの激しさに、私の体は少しずつ反っていき、後退りしていった。 そして腰がぶつかったのは、ダイニングテーブル。 そこまでくると、もう後ろには退けず。 わぁ…、どうしよう。重なる唇も体も、熱くてしょうがない。 待って。…私、…無理かも。
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