第5話

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私は勢いよく吹き出し、声を上げて笑ってしまった。 「アッハハハハ!」 それは涙が滲んでくるほどで。 「な、なんだよ!そんな笑うとこじゃねぇし!」 「ごめんなさい。でも、…でも、すっごいうれしくて…。ありがとう」 滲む涙を拭いながらそう伝えると、晋くんはブツブツ呟いて照れたように椅子に腰かけていった。 龍くんもそれを見届け、クスクス笑っている。 恭は椅子から立ち上がり、右手で私の頭を優しく撫でてきた。 顔を上げ目が合うと、優しい眼差しで微笑んでいた。 あまりの安心感に、さらに涙が滲んでしまいそうだった。 雨上がりの午後。厚手にかかっていた雲の隙間から、太陽の光が差していた。 お店のドアが開かれ、お客様がやって来る。 「いらっしゃいませ!あ、森さん!」 私は元気に声をかけた。 少しずつ覚えた顔見知りのお客様。 シャンティに関われば関わった分だけ、馴染みのお客様が増えていく。 「こんにちは!今日はシュークリームもらいにきたの」 「はぁい!いくつにしますか?」 「これから子供たちが家に集まるらしくて、十個ほしいんだけど、ある?」 「はい!大丈夫ですよ!」 こんなやりとりをして楽しく過ごしていると、再びお店のドアが開いた。 「あぁ!文おばぁちゃん!いらっしゃいませ!」 「おやおや、今日も元気だね」 にっこり笑顔を返してくれた。 私と恭と、公園で話をして以来、少しずつお店に入ってくれるようになっていた。 初めてきてくれたときはあまりにうれしくて、文おばぁちゃんを席までエスコートしてしまったくらい。 その日から、文おばぁちゃんの席は窓側の一番眺めがいいところと、私が決めていた。 月一回だったのが、最近では毎週の間隔になりつつある。 文おばぁちゃんの姿にうれしくなって、今日もそこまでエスコート。 「何か、食べていきますか?」 「この前来たとき、限定のが出るとか言ってなかったかい?…それにしてみようかねぇ」 その言葉に、私はおもいっきり微笑んだ。 「ありがとうございます!待っててくださいね」 そしてショーケースに戻り、恭が何度も何度も試行錯誤作り上げたスイーツを取り出した。 形はあのときとほぼ同じだけど、柚子は冬にということで、代わりにレモン漬けした季節の桃をゴロンと乗せたパイ。 大事に丁寧に、文おばぁちゃんの元へお届けした。
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