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…いったい、何なんだろう?
長谷川さんって…、誰?
恭の知り合いなのかなぁ?
厨房のドアをコンコンとノックする。間を置いて、ドアを開けた。
すると恭は顔を上げ、こちらへ振り向いてきた。
「今、大丈夫?」
「ん?どうした?」
私は恭のそばへ近づいた。
「恭に会って話がしたいって男性が来てるんだけど。…長谷川さんの紹介でって言ってたよ?」
「え!?長谷川さん?」
一瞬目を大きくして、続けてコクンと頷いた。
「そうか、わかった。行こう」
私たちはすぐにその場を後にした。
2人でお店に戻ると、男性はすぐにこちらに気づき、深々と頭を下げた。
恭もすぐに頭を下げて返す。そして声をかけた。
「加瀬恭一です。…君は?」
「今井健(イマイ タケル)と言います。初めまして」
「長谷川さんの紹介だって?」
「はい。少し前まで、長谷川さんのお店でお世話になってました。次は自分の店をって考えてたんですが、その前に加瀬さんのところにも行ってこいと言われて」
「へぇ、そうか。…ここで立ち話もなんだから、中にいこうか。今井くん、時間は?」
「あ、大丈夫です。いろいろ話したくて来たんで、ぜひお願いします」
恭はそれに頷き、家の方へ歩きだした。
が、すぐに続けて私に声かけてきた。
「柚花」
「あ、はい」
「悪い。キッチンでコーヒー2つ出して」
「はい!わかりました」
返事をして、私の隣で様子を見てたバイトくんにお店をお願いし、後に続いた。
キッチンにやって来ると、恭は椅子に腰かけ、その前に今井さんを座らせた。
私はコーヒーを淹れようと、コップを取り出す。
「長谷川さん、元気?」
話始めたのは恭から。
「はい」
「長谷川さんとこ、きつくなかった?」
その問いかけに、今井さんが苦笑いする。
「はい。正直、きつかったです」
「アハハ!厳しい人だからな。でも、すごいだろ?俺は尊敬してるよ」
「はい、わかります。一から全部教えて頂きました」
「…ところで、いくつ?」
「あ、27です」
「…若いな。自分の店、考えてるのか?」
私はコーヒーを淹れ終わるまでの間、恭と今井さんの話にそっと耳を傾けていた。
長谷川さんって、恭もお世話になったパティシェの方なんだね。
私がシャンティへ来る前の恭に触れられることが出来たような気がして、なんだかうれしかった。
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