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額から汗を足らしていると、恭が割って入ってきた。
「おい、お前ら。勝手に話を進めるんじゃない。誰が住み込みでなんて言った?」
「…え?それじゃあ、今井さんは…」
恭は私に振り向くと、優しく続けてきた。
「家はここから四つ目の駅らしい。電車通い出来るそうだ。柚花が心配することは何もない」
それを聞いて、私はパァッと胸が明るくなっていった。
よかった。
そっか、それなら大歓迎かも。
私はすぐに笑顔になれたんだけど、晋くんはどうも納得できずにいるみたい。
それでも今井さんに興味があったのか、晋くんも龍くんも、あれこれと恭に話を聞いていた。
それだけシャンティに新しい人が来るってことは、大きなことなんだなぁって実感していた。
次の週。
今日からいよいよメンバーが1人加わる。
私は朝からいつもの仕事をこなしていた。もちろん皆も。
開店前の準備をしているとシャンティの入り口に人影を見つけ、慌てて駆け寄った。
今井さんだ。
急いでドアの鍵を開けた。
「おはようございます!」
すると、ペコッと頭を下げてきた。
「おはようございます。すいません。正面の入り口しかわからず、ここから入ってもよかったのか迷ったんですが…」
「そうですよね、初めてだからわからないですよね!あとで、裏口教えます」
「はい、お願いします」
そして笑顔を返す今井さんを見て、とても丁寧な人だなぁと感じていた。
その後厨房へ通し、恭がそれぞれの紹介を始めた。
もちろん朝の忙しい時間に余裕はあまりないため、簡単にだけれど。
今井さんもすぐ恭と一緒に厨房で働くのかと思いきや、まずは接客からということで、龍くんと私と今井さんの3人で開店を迎えることになった。
龍くんが今井さんにあれこれと教えていく。
私が初めてやって来たときのように。
それを見て、どこか懐かしく思えていた。
いつの間にか龍くんは今井さんを健くんと呼んでいて、スキンシップの素早さに唖然とした。
私も何か、先輩らしきことをしなければいけないのかと思っていると、こんなときに限ってドジを踏んだりする。
つまり、私もまだまだだろってことですかね。
そんなこんなでお昼を迎えると、龍くんが声をかけてきた。
「柚ちゃん、俺2時には出るからさ、さきに健くんとお昼入っていいよ」
「あ、はい!わかりました」
そして、今井さんと一緒にキッチンでお昼を取ることに。
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